現在、天王寺動物園では7頭のチンパンジーを飼育しています。雄はリッキー(26歳)、レックス(17歳)の2頭、雌はアップル(28歳)、プテリ(27歳)、ミナミ(25歳)、ミツコ(21歳)、レモン(6歳)の5頭です。雄同士は喧嘩をするため2つのグループに分けて、曜日ごとに入れ替えて展示しています。Aグループが雄のリッキーと雌のアップル、プテリ、ミナミ、レモンの5頭、Bグループは雄のレックスと雌のアップル、ミツコ、レモンの4頭です。
野生のチンパンジーは10頭から50頭、多い時には100頭の群れで生活しています。力の強い大人の雄を中心として子供から年寄りまでが一緒に暮らしています。天王寺動物園の群れでも、頭数は少ないですがA、B両グループにリーダーがいます。Aグループのリーダーはあまり統率力がないのですがリッキーが一応リーダーです。Bグループのリーダーは雄のレックスが若かったので、これまで雌のアップルがリーダーでしたが、レックスの成長につれ、最近はアップルとの力関係が互角になってきました。
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![アップル](report/photo02.jpg) |
![レックス](report/photo03.jpg) |
リッキー |
アップル |
レックス |
チンパンジーたちは、親子のアップルとレモンを除いて、放飼場に出ていない時は、それぞれ個室に収容しています。部屋にいる時は他のチンパンジーとは声のみで相手の存在を分かっているだけで、お互いが顔を合わすことはありません。放飼場での優劣関係は、2日に1回、朝、お互いが顔を合わせた時に毎回、決まります。最近では最優位の座をめぐってアップルとレックスが争いを始めました。朝、外に出た時に、レックスが運動場を走り回ったり、扉をたたいて大きな音を出したり、時にはミツコを追いかけたりして自分の力をアピールしたりします。
また、この時にミツコをけしかけて、アップルを攻撃させたり、自分も攻撃に加わることもあります。そして、あたかも自分が最優位になったかのような行動をとることがあります。
また、昼のおやつの時間の前になるとアップルとレックスはお互いの体をグルーミングしあいます。おやつは放飼場にばらまくので、けんかが起こりやすく、優位なものほど多くの食べ物を獲得できるため、おやつの時間の前のグルーミングはお互いの気持ちをリラックスさせ、スムーズに食物を獲得できるようにするためだと思われます。
日々、彼らの行動を観察していますが、まだ、アップルの方が優位に立っているようです。皆さんも動物園にお越しになり、チンパンジーたちの行動を一日観察してみませんか。新たな歴史の始まりに出会うことになるかもしれません。
(写真提供:滋賀県立大学 福永 恭啓)
(松下 俊之)
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