ヒトが鳥の卵をかえすには?


 春になると、多くの鳥たちが卵を産みヒナをかえします。みなさんのすぐ近くにいるスズメも、気をつけて観察してみると、色がやや薄くまだ模様のはっきりしないヒナが、親に餌(えさ)をねだっている様子がみられます。
孵卵機 動物園でも様々な鳥が卵を産みますが、中には卵を産みっぱなしであたためない個体もいます。そのような卵を、「孵卵器(ふらんき)」とよばれる機械に入れて人工的に孵化(ふか)させることがあります。例えばキジの仲間のヒナをかえすには、孵卵器の温度を37.5℃度前後、湿度70%前後に保ちます。親鳥は、卵をまんべんなくあたためるために時々卵を転がして向きを変えます。孵卵器でもこれをまねて、1時間に1回、自動的に約90度卵の向きを変えます。また、親鳥が餌を食べにいくなどして巣を離れている時間を再現するため、毎日1時間ほど卵を孵卵器から出して冷やす時間をとります。例えばニジキジだと、孵卵器に入れてから約28日後にヒナがかえります。中には、受精しておらずまったくヒナが育たない卵や、育っている途中で、中でヒナが死んでしまう卵もあります。親鳥が卵をあたためている場合、このような卵だけなぜか途中であたためるのをやめることがよくあります。どうして親鳥にはそれがわかるのか、とても不思議です。ヒトにはそんな能力はありませんが、その代わり、「検卵器(けんらんき)」とよばれるライトを卵にあてて見てみます。ヒナが育ち始めると、初期には卵の中に血管ができてくる様子が見え、だんだんヒナの体ができてくると光を通さなくなります。ヒナの育っていない卵は、ただ明るく照らされるだけです。

ニジキジの親

 現在キジ舎では、孵卵器に入れた卵からかえったニジキジのヒナが3羽育っています。残念ながらみなさんに見ていただける場所には空スペースがなかったため、キジ舎の裏側で飼育しています。今年はもう孵卵器の活躍するシーズンは終わったので、きれいに掃除をして、また来年にそなえておきます。

ニジキジのヒナ

(中島 野恵)