【ペア形成に向けて】
天王寺動物園で飼育しているチュウゴクオオカミは♂が愛称「チュンサン」で2002年生まれの7歳、♀が愛称「ユジン」で2004年生まれの5歳となります。
せっかくの若い個体ですから、何とか繁殖に結び付けたいという強い思いを持って、2008年7月14日に初めて、寝室内で同居させました。午前中だけの同居でしたが、以降は8月3日から9月1日までの毎週休園日に午前中の寝室内同居を続け、9月23日に展示場での同居展示をスタートさせました。
オオカミはペアになると非常に強固な絆ができあがります。10月8日にはじゃれあいがはじまり、11月、12月は遠吠えを繰り返すようになりました。おそらくこの時点からペア形成ができてきたように思います。
【交尾はまだかなと思っていた矢先に】
「交尾はまだかな?」と担当者同士で相談し始めた矢先の2009年1月15日、交尾行動が始まりました。以降、26日までの12日間、確実に交尾確認ができました。
オオカミ舎に関わる担当飼育員は当時5人、休暇取得はローテーションですから、出勤者は必ず、観察するようにしました。こうしたチームの努力の甲斐あって、12日間連続の交尾確認がとれました。また、担当以外の人もやっぱり繁殖は気になるもので、しっかりとサポートしてもらいました。
【出産準備で大忙し】
さて、交尾行動が確実になりましたから、次は出産準備を整えなければなりません。何せ、前回の繁殖事例は26年前なのでほとんどゼロからのスタートです。オオカミの習性を学び、一番端の寝室を産室にするため、全面板張り、シャッター締め切り、ワラを敷き詰めて、真っ暗な巣穴状態を作り上げるという作業にかかりました。この作業は出産予定日を算出し、逆算して1カ月前に整えました。♀「ユジン」の慣れる時間も含めて、考えた結果です。そして、観察カメラを設置し、DVD録画で夜の行動観察を同時並行で行うようにしました。カメラ設置やDVDレコーダーの設置については、交尾確認同様、多くの関係者にご協力をいただきました。こうした陰の努力も合わさることで大きな実を結ぶものとつくづく思いました。
【ついにその時が】
オオカミの妊娠期間は60日から65日、平均が62日です。日が経つごとに♀「ユジン」のお腹はパンパンになってきました。「もうすぐかな?」と思いながら、「しかし、本当に出産するかな?」との不安もよぎりだした2009年3月29日の午前中でした。いつもどおり、展示作業に入ろうとしたら、昨日とはまったく違って落ち着きがない様子が見受けられました。「いよいよか」と思い、即座に展示を中止して、DVD観察をしていたら、11時15分、明らかに陣痛がきた様子。1頭目の出産です。続いて、2頭目、3頭目、最終の4頭目を出産したのが、13時55分でした。初産にも関わらず、「ユジン」は4頭の赤ちゃんを出産してから今の時点まで、まったく分け隔てすることなく愛情を注いで、子育てをしています。また、オオカミの習性は群れを作りますので、父親も子育てに熱心です。出産から、2カ月が経過して、愛くるしい赤ちゃんオオカミからきりっと引き締まった顔になってきました。でも、まだまだ子どもです。毎日、展示場で親子6頭が仲むつまじく遊んでいます。
【愛称が決定しました】
さて、最初は子犬程度にしか思っていませんでしたが、何と成長の早いこと。生後1カ月の時点で平均3,500gだった体重が2カ月で7,500gから8,000gになりました。
こうなると愛称を決めようということになって、考えました。性別の内訳は♂1 ♀3でした。先に4頭の愛称の由来を考え、キャッチコピーを作りました。 これからも順調にすくすく育ってほしい気持ちを込めて、キャッチコピーは「元気に萌え〜と明るく、楽しく」、そこから中国名らしく同じ文字を二つ並べて、♂「元元(げんげん)」 ♀「萌萌(もんもん)」 ♀「明明(みんみん)」 ♀「楽楽(らら)」としました。
天王寺ウルフルズ4頭、これからも末永くよろしくお願いします。
(西川徹二)
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