新米ゾウ係糞闘記


「格 差」
 ゾウ担当見習いである私や尾曽さんも年数が経ち、ラニー博子の調教や餌やりなど先輩たちと同じような仕事をすることが増えてきました。しかし私たちの関わりが増えると共にゾウたちの態度のちがいも更に目立ち始めたのです。
 皆さんが怖い先生と優しい先生とで態度を使い分けるのと同じでゾウたちも4人の飼育係の順位に応じて態度を使い分けるのです。ラニー博子は調教を通して私たち見習いのことを試しているようです。たまに先輩に代わってもらうと、それはもう先輩を気づかってキビキビと動き、小声で注意しただけできちんと言うことを聞きます。しかし見習いになると時にはダラダラと適当に手を抜き、先輩より大声で叱っても知らん顔の時すらあります。たとえ痛い罰を与えたとしても同じことでしょう。それよりもゾウたちに認めてもらうしかないのです。私たちがケンカにつよくて、お金持ちなだけでは人に好かれないのと同じで、ゾウも年数をかけて信頼できる人だからこそ言うことを聞くのです。ゾウはエサだけで人を好きになってくれる動物ではありません。ゾウの飼育係になると言うことは皆さんの新しい家族になるのと同じくらい時間がかかる、気配りの必要な長い旅なのです。

皆が帰った後も机の上での戦いはつづく…

(西村 慶太)