新米ゾウ係糞闘記


「涙の飼育日誌」

 私たち飼育係は毎日飼育日誌を書いています。皆さんも経験のある観察日記と同じものです。日ごろのエサやフン、行動の変化など毎日の記録の積み重ねが、後で貴重な資料となり役に立つのです。もちろん私たちゾウ担当も飼育日誌を書いていますが、ゾウの日誌は他の動物のものとは少し意味がちがうのです。
 ゾウの飼育日誌を書くのは見習いである私と尾曽さんの役目です。日誌の内容は毎日の記録はもちろんですが、一番大切なのは「今日は何を感じたか」ということなのです。日誌というよりは日記に近いものかもしれません。先輩から教わったことや体験して感じたことも日誌に書きます。それを他のメンバーが読むことで、教えたことをきちんと理解できたか、またどう感じたか、口にはできなかった疑問や悩みはないかなどを確かめます。ゾウの担当はとにかくストレスが多く、苦悩で精神を病んでしまいがちなので、見習いの心のケアーのための日誌でもあるのです。
 私たちはこの日誌に嘘はつきません。だから感激の気持ちはもちろん、やり場のない怒りや苦悩、時には先輩に対する不満をこの日誌にぶつけることもあります。また時にはリーダーの小谷さんが色ペンで、そっと労いや励ましのコメントを書いてくれていることもあります。過去の日誌を読んでみれば、先輩たちの苦難の様子が書かれています。ゾウの飼育日誌には歴代飼育係の苦難の道のりがいっぱい記されているのです。 

皆が帰った後も机の上での戦いはつづく…
皆が帰った後も机の上での戦いはつづく…

(西村 慶太)