2008国際カエル年を振り返って


・カエルがピンチ!
 地球にはカエルを含め6347種の両生類が知られており、その30%の種にあたる1905種が絶滅の危機にあると言われています(IUCNレッドリスト2008 http://www.iucn.jp/protection/species/redlist_table.htmlより)。これは全種数の21%が絶滅の危機にある哺乳類、12%が危機にある鳥類よりも、更に深刻な状況です。さらに、新たな感染症であるカエルツボカビ症の発生で、カエルは存亡の淵に立たされています。

アフリカゾウの運動場
世界のカエルたち

・2008国際カエル年とは
 この危機的状況を打開するために、世界動物園水族館協会(WAZA)、国際自然保護連合(IUCN)の種保存委員会の中にある「両生類の専門家グループ」と「野生生物保全繁殖専門家グループ(CBSG)」が、「両生類の箱舟計画(Amphibian Ark)」というプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、カエルを生息域外(動物園や水族館ほかの飼育施設)で保全し繁殖させ再び生息地に戻そうという取り組みです。このプロジェクトのための資金獲得キャンペーンが2008年国際カエル年です。なぜ今年かと言うと、英語圏ではうるう年をleap(訳:ピョンと跳ねる) yearということからカエルのイメージにつながるのだそうです。

国際カエル年のロゴ
国際カエル年のロゴ

 この取り組みに世界中の動物園・水族館が賛同し、様々な活動を実施しています。WAZAに加盟する(社)日本動物園水族館協会も国際カエル年参加を決定し、日本の動物の保護のため加盟園館に設置しているペンギン型募金箱への募金の20%をこの基金に当てることを決めました。国内の動物園水族館でも、両生類の保全を訴える様々な活動が行われています。この活動、園館ごとに地域色や個性があり、また実施する側も結構楽しんで企画しているのがよくわかります。効果ですが、何とヨーロッパの動物園水族館協会では既に45万ユーロも資金を集めたとのことです。国内の園館でも数万円単位で寄付金獲得に成功しています。

・天王寺動物園の取り組み
 当園では早速1月2日に「園長の干支の話」で国際カエル年を取り上げました。以後、獣医師はじめ職員が折に触れ、国際カエル年とカエルツボカビ症の解説、寄付の呼びかけを行いました 。野外ステージでの子どもたちへの絵本の読み語りでは、獣医師がカエル帽子を被り、カエルツボカビ症の解説と対策を伝え、“ツボカビを広げないお約束"の話をしました。
 また、カエルツボカビ症の国内侵入の危険性が認識されてから、当園ではカエルの新規導入を一旦見合わせました。そして、検疫体制確立のため、空いていたプレハブ小屋を利用して、両生類検疫室を獣医師の手で自作しました。急ごしらえのため、温度管理面などを心配したのですが、カエルも猛暑を乗り切り、検疫も無事終了し、新たなカエルを再び展示することができました。

手作りの検疫室で飼育したモリアオガエル
手作りの検疫室で飼育したモリアオガエル

 は虫類生態館(アイファー)の飼育係も「アイファー探検隊」や「ペーパーフロッグジャンピング大会」などの企画を行いました。10月25日から11月24日まで開催しました特別企画展「絶滅の危機にある動物展」でも、国際カエル年コーナーを設け、パネルやカエルのおもちゃを展示しました。そして、当園で最も大きな取り組みが9月の「かえるの学校・天王寺分校」の開催です。

・かえるの学校・天王寺分校
 かえるの学校・天王寺分校とは、授業に見立てた一連のカエル関連行事を本年9月に行い、参加に応じてスタンプを集めてもらう企画です。集めたスタンプは後述の「かえっこバザール」でおもちゃに換えることができます。別に、毎回抽選でカエル年の缶バッヂをプレゼントしました。このバッヂは園内の売店で購入もでき、収益の一部は両生類の箱舟計画に寄付されます。9月6日に園長による開校あいさつとオリエンテーションの後、特別授業として自然環境研究センター・研究主幹・千石正一氏による特別授業「王子とカエル」を実施しました。

千石正一氏による特別授業
千石正一氏による特別授業

 以降9月の13日は国語「カエルの絵本大集合」と社会「蛙・祭・ひと」、14日は算数「カエル算に挑戦」と理科「かえるの子はかえる?」、20日は遠足「カエルの棲家を見に行こう!」と図画工作「工作教室・カエルをもってかえる?」、21日は保健体育「いま、カエルが危ない」を実施しました。23日はホームルームとして、「にしなりかえっこクラブ」との市民協働で、不用になったおもちゃの交換会である「かえっこバザール」を開催しました。当日飛び込みの来場者向けに、カエルクイズ等でスタンプをもらえるコーナーも用意しました。最終日の28日には本市の文化振興費を申請し、混声合唱グループによる音楽「カエルの大合唱♪」と閉校式を実施しました。
 カエル年キャンペーンは、2009年3月末まで延長されることになりました。園内にはペンギン型募金箱や募金用紙、チャリティーカエルバッヂを用意していますので、カエルを守るため、引き続きご寄付などのご協力お願いします。          

(芦田 貴雄)