天王寺動物園には、雄1頭、雌2頭のカバがいます。雄25歳のテツオと雌36歳のナツコは親子です。そしてテツオの花嫁候補としてメキシコからやって来たのが10歳のティーナです。メキシコのグアダラハラ動物園ではアルベルティーナと呼ばれていましたが、天王寺動物園に来園後、愛称を募集し、元の名前を呼びやすくしたティーナになりました。
ティーナは当園に来たときはまだ1歳の子カバで、テツオとは一緒にできないし、雌のナツコとの同居も考えたのですが、ティーナがあまりにも小さいので、体が大きくなるまで単独で飼育することにしました。
ティーナも2006年の10月には7歳の誕生日を迎え、体もずいぶん大きくなってきたので、いよいよ同居の計画を立て、まずは雌のナツコと同居させることにしました。2006年4月に同居は成功しました。人間でいえば、嫁と姑の関係になるのですが意外と仲がよく。ティーナが子どものようにナツコに甘えたり、年上のナツコに敬意を払っているようにも見えました。
それから2年、ティーナも更に成長し、年頃になってきたので、いよいよテツオと同居させることにしました。カバの雌は1カ月周期で発情がきて、1週間ぐらい続きます。発情が始まってから数日後が最も発情が強く、それ以外の時期に一緒にするとケンカをする危険があります。後はティーナの発情がくるのを待って同居のタイミングを見極めることにしました。しかし、肝心の発情の兆候がなく、性成熟に達しているかどうかわかりません。資料を調べてみると、野生では9歳、動物園では5歳ぐらいで性成熟に達するとされており、ティーナの年齢では発情がきてもおかしくないのですが・・・。
そこで、みんなで相談し、とりあえずテツオと一緒にしてみることにしました。雄と一緒にした刺激で発情が来るのではないかと考えたのです。9月8日の休園日、みんなが見守る中、テツオとティーナを一緒にしました。「もし、ケンカをしたら、すぐに離さないとティーナがやられてしまう」と心配しましたが、意外にもティーナがテツオに咬みついたり、追いかけまわすなど、ちょっかいをかけている感じでした。どうやらティーナにしてみれば、新しい遊び相手ができて、喜んでいるようでした。むしろテツオの方がティーナのしつこさにうんざりしているようでした。
同居からl8日目の9月26日の11時ごろ「カバが交尾している!」との連絡が入りました。急いで駆けつけると完全かどうか分かりませんが、確かに交尾の姿勢をとっていました。前日まで何の兆候もなかったので、単なる遊びかもしれませんが、これを機にティーナが雌らしくなり、繁殖につながってくれることを願っています。
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仲の良いテツオ(右)とティーナ(撮影:高橋 雅之)
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(油家 謙二)
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