新人飼育係3名を迎えて

 動物たちも、もりもり食べる“食欲の秋”がやってきました。動物たちがどんなものを食べているのか、今回は調理場をのぞいてみましょう。家庭ではちょっと見ることができない食材がいろいろとあります。動物園では野生と同じえさが手に入らないこともあり、栄養バランスを考えた、代わりのえさを与えています。


肉食動物
  一口に肉食動物と言ってもえさは様々です。トラやオオカミには主に生肉を、アシカやペンギン、コウノトリには魚を、ヘビにはネズミを、シギ類にはカワエビや昆虫を、ナガクビガメには生きた金魚を、カエルにはコオロギを与えています。
 一般家庭では見られない食材にニワトリの首や頭、冷凍のラット(ドブネズミを品種改良したもの)やマウス(ハツカネズミを品種改良したもの)、ヒヨコなどがあります。

カワエビとコオロギを食べるクロエリセイタカシギ

 ライオンやトラには、大きな牛肉のかたまりや、内臓をぬいたニワトリ一羽丸ごとを与えています。牛肉は、脂身の少ない赤身の肉を使います。日本人は脂身の多い肉が好きですが、動物はあまり好きではないようです。
 動物園では、カルシウムほかミネラル補給のため、鳥は骨つきのまま与えます。しかし、鳥の骨は、割れたときに鋭くとがり、動物の胃や腸に刺さってしまいます(ですから、ご家庭ではイヌに骨付きの鳥肉を与えないで下さい)。そこで、肉の上から包丁で骨をたたき、骨をくだいてから与えます。

鶏の骨をくだく
鶏の骨をくだく

 また、大型の肉食動物には、おやつとして、ウシの骨やブタの骨をかじらせます。これは歯の掃除になるためです。あごの力が特に強いブチハイエナは、骨をかみくだいて、中の骨髄(ずい)を食べます。

骨をかじる
骨をかじる

 野生の動物は、毎日狩りが成功して食事できるとは限りません。むしろ、ライオンなどは4日に1回くらいしか狩りをしないのが普通です。動物園でも、えさを与えない日を作って、動物の内臓を休ませます。例えば腎臓のはたらきの一つは、肉の中の余分な窒素(ちっそ)をアンモニアなどに変えて体外に排出することです。しかし、毎日肉を食べると、その分腎臓に負担がかかり、将来腎不全などの病気の原因になると考えられます。

魚を食べる動物
 ペンギンやアシカではアジを主食として与えています。アジは冷凍保存したものを使いますが、魚は冷凍するときに、ビタミンBが壊れてしまうので、魚の中にビタミン剤をつめて与えています。フンボルトペンギンにアジを少しずつ投げて与えると、よく泳いで運動になります。
 動物の本能を満足させ、生活を豊かにするために、ホッキョクグマ、フンボルトペンギン、モモイロペリカン、ヨウスコウワニには生きたコイも週1回与えています。ホッキョクグマのゴーゴがコイをねらって、ごうかいに水しぶきをあげて飛び込むところは、迫力満点です。

飛び込むゴーゴ
飛び込むゴーゴ

小動物を食べる動物
 ワシ、タカ、コンドルなどの猛禽類(もうきんるい)やワライカワセミ、ヘビや大型トカゲにはラットやマウスを与えています。医学実験にも使われるラットやマウスで、冷凍のものを使います。野生のネズミと違い、清潔に育てられているので、病気をもらう心配もなく、安心して与えることができます。ヘビは獲物の体温を感じて獲物を捕まえるので、凍ったマウスは、ぬるま湯で温めて与えます。
 キーウィはミミズが主食です。月に3回生きたミミズを与えますが、それだけでは足りないので、毎日ウシの心臓肉をミミズのように細切りにしてオートミールやビタミンなどと混ぜて与えています。

ミミズを探すキーウィ
ミミズを探すキーウィ

 また、は虫類生態館では、生きたマウスやコオロギも餌として育てています。カエルには主にコオロギやミルワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)などを与えていますが、カエルは動くえさでないと食べないので、カエルの大きさに応じて、様々なサイズのコオロギを育てる必要があります。ヘビも大きさに応じて、いろいろな大きさに育てたマウスを与えています。
 残酷なように思えるかもしれませんが、肉食動物は他の動物を食べないと生きていけません。人間も他の動物や植物を食べて生きています。


 なお、よく質問のある動物のえさ代ですが、1日1頭あたりアジアゾウ9346円、アミメキリン2928円、ライオン1491円、タンチョウ550円、フンボルトペンギン210円(平成18年度調べ)です。

(芦田 貴雄)