「2007年夏の思い出」

 今年もゾウ達の水浴びの季節がやってきました。厳しい夏の中、飼育係のホースによるシャワータイムはゾウ達の楽しみでもあります。今年に入り、見習いである私や尾曽さんに対して春子が水をかけて威嚇してくることもなくなりました。そういえば、去年の夏にこんなことがありました…。
 2007年夏、この時も昼食後のシャワータイムはゾウ達の日課でした。青草を食べ終えると自分で水を浴びながらこちらをチラ見して、「水をかけて」とアピールしてくるのです。しかしこの日は昼から共同作業があったため、お昼のシャワーをしてやることができませんでした。作業が終わり、先輩の小谷さんとゾウ舎に戻ってシャワーをしてやろうとすると、春子の様子が少し変です。暑くて水をかけて欲しいはずなのですが、少し距離を置いて不服そうにこちらを見ています。どうやらお昼のシャワーをしてやれなかったことが気に入らないようなのです。ゾウ達が水浴びをためらう時は、軽く水をかけると踏ん切りがついて水浴びを始めることがあるので、この時も試しに鼻先へ水をかけてみました。すると水浴びを始めるどころか、鼻を振り上げて怒り出す始末。「コラ小僧!何でもかけたらええっちゅうもんちゃうやろ!相手のこと考えろ!」春子は更にへそを曲げて立ち去ってしまいました。本当は水浴びしたくてたまらなかったはずですが、小僧を叱った手前がまんするしかなかったようです。
 その後、小谷さんに連れられ、リンゴを持って春子におわびに行きました。「ごめんよ春さん。機嫌直して」ツーンとした態度を取りながらも口を開けてリンゴを受け取る春子。「フン、反省したか小僧。わかったらええんじゃ」高飛車な姿勢は嫌いでも、謙虚な姿勢には弱い春子。その日の夕方、再び春子のシャワーに向かうと、今度は近くに寄ってきて気持ちよさそうに水浴びしてくれました。 

(西村 慶太)