天王寺動物園と上海動物園の動物交流事業も第16回を迎えました。今回はチュウゴクオオカミの雌1頭が3月18日にやってきました。また、ヨウスコウワニの雌雄2頭ずつがこれから来園する予定です。
 上海からの交流団は以下の4名の方で、3月17日に来日されました。

徐 正強 上海動物園 技術総管
丁 允輝 上海市緑化管理局 主任科員
宋 培琳 上海動物園 飼養主管
虞 堅頤 上海動物園 獣医師
動物贈呈式
技術交流会
動物贈呈式
技術交流会
 そして交流団の皆さんと天王寺動物園職員との、主に今回入園したオオカミと来園予定のヨウスコウワニについての技術交流会が開かれました。

第16次大阪市・上海市動物飼育技術交流会
日 時: 2008年3月18日(火)13:40〜
場 所:天王寺動物園レクチャールーム

今回は技術交流会の内容の一部を紹介します。以下、天王寺動物園は、上海動物園はと略します。

チュウゴクオオカミについてNew Faceでも紹介しています)
 :2004.3.16生まれの雌で、済南市(山東省)の動物園で生まれました。上海動物園には2006年3月に入園しました。上海での繁殖歴はありません。上海動物園のオオカミの中では「美人」です。上海動物園ではここ2年ほど繁殖はありませんでしたが、日本に来る少し前に雌2頭の妊娠が判明しました。
 :繁殖適齢期はいつごろですか?また何歳くらいまで繁殖可能ですか?
 :適齢期は4〜5歳くらいです。何歳までかは、上海も飼育してまだ浅いのでよくわかりません。
 :雌2頭が妊娠中ということですが、出産準備はどんなことをしますか?
 :静かにしていることと、乾草を敷くこと。また、他の個体や人との隔離はしています。
 :食欲が落ちてきたら出産が近いという判断をしているのですか?
 :確かにオオカミは出産前に食欲が落ちます。
 :出産前に群れから離すのですか?
 :離します。
 :飼育員は動物舎内に入らないのですか?
 :慣れた飼育員なら動物舎内に入っても特に問題はありません。
 :雌が雄に咬まれて死亡したような事例がありますか?またその原因は何でしょうか?
 :上海でもそのような事例があります。さらに雌が雄を咬んだこともあります。原因については究明中です。
 :天王寺動物園の場合、雄が雌の喉を咬みに行き、殺す気があったように思えますが…
 :上海でも雄が雌の首に咬み付いたことがあります。死亡に至らずとも傷ができていることもあります。
 :予防策や、そうなる兆候のようなものはありますか?
 :兆候はありません。予防としては、ケンカがあったらその個体を分けるくらいです。
 :野生でもそのような事例はあるのでしょうか?
 :研究が不十分で資料も少なく、これから究明していきたいと思います。

チュウコゴクオオカミの雌
来園予定のヨウスコウワニ
今回来園した
チュウコゴクオオカミの雌
来園予定のヨウスコウワニ
(写真提供:上海動物園)

ヨウスコウワニについて
 :だいたい6歳くらい。安徽(あんき)省のヨウスコウワニ繁殖センター生まれで、血縁は不明です。兄弟姉妹かもわかりません。毎年同じ池で1000頭ほど孵化し、その中から4頭を昨年11月に選んできました。血縁のある可能性も少なからずあると思います。上海動物園へは1月11日に来ました。上海動物園でのヨウスコウワニ繁殖歴は、1970年代に中国で初となる人工繁殖に成功して以降はありません。
 :今回来るワニの大きさはどれくらいですか?
 :およそ120pくらいです。
 :雄、雌を同居させたところ、雌が殺されたことがあり、ました。同居はどのように行うべきでしょうか?
 :ワニの闘争はほぼ体の大きさによります。つまり大きな個体が小さな個体を襲います。上海動物園でも闘争することがあり、頭などによく傷が受けることがあります。天王寺の展示場は狭すぎると思います。野外調査によれば、1ha当たり1.5頭が適正とされています。
 :自然復帰のプロジェクトの進捗状況はいかがですか?
 :中国生物保護協会(WCS)が1996年ごろに行った揚子江河口付近での自然復帰は失敗に終わりましたが、現在の繁殖センターでの自然復帰の状況は把握していません。
 :他の動物園の状況はいかがですか?
 :宣城(安徽省)が最も進んでいます。他ではほとんど繁殖例はありません。屋外の方が繁殖しやすく、個体密度が高いとよくありません。冬眠の温度も重要で、室内でずっと一定の温度で飼育するのはよくありません。
 :冬眠なしで繁殖した例が日本であります。
 :天王寺動物園では水の透明度が高いが、センターなどでは水は濁っています。透明度はどのくらいがいいのでしょうか?
 :野生では池や沼に生息し、透明度はそれなりに高い場所にいます。濁っていると死亡率が高くなったりします。
 :交尾、産卵の時期、巣穴の準備などはいかがですか?
 :冬眠後(5〜6月)に交尾し、その後1カ月くらい(7〜8月)で産卵します。巣穴は水辺の木や竹林近くなどに掘ります。
 :繁殖のための性比はどれくらいがよいのでしょうか?
 :野生では雄1頭に対し雌4頭ぐらいです。
 :天王寺に来る予定の個体は上海動物園では同居飼育されているのですか?
 :同じ大きな池の中にいます。
 :スペース的には同居ということになますが…
 :少なからず闘争はあります(苦笑)。

その他、以前交流事業で天王寺動物園から上海動物園に贈ったケープペンギンの肺真菌症についての質問が上海動物園から出ました。真夏と真冬に屋内展示するのがその一因となっているように思われました。

(記録:佐野 裕介)