ラクダは、2〜3か月間ほとんどエサを食べなくても大丈夫です。なぜなら、ラクダのこぶには脂肪がつまっているからです。当園の雄ラクダのジャックは、ここ数年、2月末から5月の初め頃まで餌をほとんど食べていません。餌を食べなくなってから約1か月でこぶがしぼみ始め、約2か月後には、特に前のこぶが倒れてしまいます。雌のコニーと比べるとよくわかります。
こぶが倒れているジャック |


こぶに脂肪がつまっている
コニーと子どものトニー
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ジャックだけではなく、他園の雄も10歳をこえると2月頃から餌を食べなくなり、餌を食べない期間が2〜4か月ほど続くそうです。これは自然の本能ではないかと考えられます。ラクダは野生では、雄2頭、雌6頭ぐらいの小さなハーレムを作ります。10歳をこえると、繁殖期には近親交配を避けるために、雄は他の群れの雌を探しに旅に出るようです。砂漠の中を旅する時は餌もないので、旅の間は何も食べられません。その本能が飼育下のラクダにも出るのではないかと、私なりに理解しています。
野生では4〜5月に子どもが生まれるようで、ラクダの妊娠期間が370〜440日で平均13ヶ月程度なので、交尾期と雄が餌を食べない時期をみると符合します。
こぶが倒れても心配はいりません。5月から餌を食べ始めると、2〜3か月で元のこぶに戻ります。食べ始めの時期は、ジャックの動きを観察して見極め、彼の食欲に合わせて十分に餌を与えます。
2007年3月4日に、ジャックとコニーの間に雄のトニーが生まれました。生後5日目頃から、母親のお乳だけでなく青草をくわえて食べるしぐさを始めました。生後1か月頃から、私が清掃のためにラクダの運動場に入っていくと、すぐに寄ってきます。トニーの目的は私ではなくちりとりで、ちりとりの取っ手にかみつき遊びます。危険なので取り上げても、ちりとりを追いかけ私のそばに寄ってきます。私がしかるとしぶしぶ止め、次は一輪車の取っ手にかみつきます。トニーの興味がいつまで続くことやらと混迷しています。

ちりとりにかみつく トニー
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(文、写真:山野 道雄) |