ホッキョクグマと地球環境

 皆さんはもうゴーゴ君に会いに来てくれましたか? とてもかわいくて、愛嬌たっぷりに出迎えてくれますよ。今回は動物病院を離れて、野生のホッキョクグマと地球環境について皆さんに知ってもらおうと思います。
 ホッキョクグマはグリーンランド、ノルウェー、ロシア、カナダ、アメリカのアラスカ州北部などの北極圏周辺に生息している陸上最大の肉食哺乳類です。成獣の雄で体長2.5〜3m、体重300〜800kgになり、最大個体は体長3mを超え体重はなんと1,000kgにも達します。現在の推定頭数は22,000頭といわれ、そのおよそ60%はカナダに生息しています。
 ホッキョクグマは野生では北極に氷が張っている冬から初夏の間に狩りを行い、氷が完全に溶けてしまう夏の間は果実や海草を食べて過ごします。そのため、狩りができる期間に、十分に食べて体にエネルギーを蓄えておく必要があります。
 ホッキョクグマは主にアザラシを食べていますが、その狩りは海の上に張った氷の上で行います。北極海の氷にはアザラシやシロイルカなどが息継ぎをするための穴があります。その穴に息継ぎをするためにきたアザラシなどを捕まえるのです。また、春から初夏にかけては、アザラシの繁殖シーズンです。アザラシの赤ちゃんは氷の穴に隠れています。その隠れ家を嗅覚と音によって探し出し捕まえます。
 しかし、今、地球は温暖化現象が進んでいます。地球の温暖化が進むと、北極の氷が溶けてしまう夏の期間が長くなってしまいます。そうなると、ホッキョクグマがエサを食べることが出来る期間が短くなってしまうのです。カナダのハドソン湾では海が凍らない期間が1週間長くなると、ホッキョクグマの体重が平均で10kgも軽くなってしまうという調査結果も出ています。お母さんグマが十分にエサを食べることができないために、1980〜92年の間にハドソン湾で生まれた子グマの半数以上が死んでしまっているのです。
 また、北極圏の環境汚染も問題になっています。「え〜! 北極に環境汚染? 住んでる人も少ないし、工場とかもあまりないんでしょ〜」と思われるかもしれませんが、地球はひとつ、すべて繋がっているのです。大気中の有害物質は気流によって、海や河川の有害物質は海流によって地球の両極である北極や南極に運ばれていくのです。ホッキョクグマは生態系の頂点にいるので危険なのです。
 では、どうしたら地球温暖化を少しでも食い止めることができるでしょうか? これからは夏も本番。暑いからといって冷房をきかせにきかせていませんか? 特に見たいわけでもないのにテレビをつけぱなしにしていませんか? また入浴時にシャワーを出しっぱなしにしていませんか?
 地球温暖化は北極や南極の氷を溶かすだけでなく、世界中の緑を奪い砂漠を広げています。地球上で絶滅していく動物が増えています。そのことは人間の絶滅も近づいているということです。日頃のちょっとした注意や心がけで、美しい地球を守っていきませんか?

(飼育課:西岡 真