春子を初めて叱る」
 私に対し、様々な嫌がらせを行いながら人間性を試す春子。先輩曰く、どんどん虐められたらいいとのこと。それだけ関心を持たれている証だし、春子が人を信頼するまでには避けて通れない審査だからです。

 そんな私も先輩から「そろそろ慶太もゾウを叱らなあかんな」という提案をされて早1年以上たちました。
それは2005年の春。ゾウたちにもそれなりに覚えられたし、このままでは審査を通り越し何をされても許される下っ端と見なされるので、これからは自分の気持ちを伝える段階に入ろうとのことでした。

 大切なのは、叱るタイミングを外さないこと、そして本気で叱ること。悪戯をされても時間が経ってから叱ったのでは何を怒られているのかゾウには判らず、逆に恨まれます。そして本気で叱って気持ちを伝えること。もちろん素直にはやめてくれません。それは私が新米だからです。仮に私が怒鳴り声を張り上げてもゾウは怖がりもしませんが、先輩に一言「こらっ」と言われるだけで縮み上がってしまうでしょう。たとえやめてくれなくても「これをしたから叱っている」という気持ちをゾウに伝えないと、悪戯がエスカレートしてやがては命に関わる事故にもつながるのです。

 春子に鼻を振られて、初めて怒鳴った私。春子はス〜ッと鼻を下ろし冷静な目で私を見ていました。「ほ〜、こいつの反応がかわってきたな。おもろなってきた」くらいにしか思われてないでしょう。でもこれからも、叱るとき、褒めるとき、そしていたわる時には気持ちを込めて接していきたいと思います。

(飼育課:西村 慶太)