「リンゴ給餌も一歩前進」
 天王寺動物園のゾウの飼育では、しつけ(調教)のご褒美にリンゴを使っています。やはりゾウも甘いものが好き。でも1個丸々与えていたのでは物凄い数のリンゴが必要で、しかもすぐにお腹が一杯になるので、細かく切ってご褒美に使います。特に若い方のラニー博子には健康管理のための調教を行っているので、このリンゴが重大な役目を担っているのです。私がゾウ担当になり、最初の1年間でゾウに餌を与えることができたのはラニー博子へのリンゴ給餌だけでした。先輩達が調教のご褒美にリンゴを与えた時に私も与えさせてもらうのです。ただし、先輩達は口に直接リンゴを与えるのですが、私の場合は危険防止とゾウの鼻の射程距離に慣れるために鼻先にリンゴを与える練習をしてきました。もう1頭の春子に関してはラニー博子ほど調教ができていないのと、高齢で新しいことを覚えるのに時間がかかるということで私は一切接触なしでした。

 そして1年が経った今、私も一歩前進してラニー博子の口へのリンゴ給餌、そして春子の鼻先へのリンゴ給餌の練習を開始しました。1年間観察していろいろな面でゾウを知り、改めてゾウの懐へ餌を与えに行く緊張感。そして同じゾウでも、ゾウによって鼻の使い方が全然違う驚きを実感しています。今まで私のことをお客さん扱いしていたゾウたちも、「そうか…お前も来るのか…」と態度を変え始めるでしょう。こちらも餌を渡すことで相手を知る勉強がつづくのです。

(飼育課:西村 慶太)