1.はじめに
アジアゾウは学者によっては10亜種以上分類する説もありますが一般的にはインド、スリランカ、タイ(インドシナ半島に生息しているもの)スマトラと4亜種と言う説が受け入れられているようです。ただ昨年
W W F なども発表している小型のボルネオゾウが発見され話題になりましたがまだ議論の最中です。
このアジアゾウは現在アジア13カ国に約50,000頭が生息しており、その中で使役等に従事している使役(馴致)ゾウが約14,000頭であると
国連の2001年使役ゾウ国際会議に報告されています。
しかし、自然環境破壊、生息域の分断化による群れの孤立化、密猟などでほとんどの地域で野生のアジアゾウは生息そのものが脅かされており、また国によっては使役用の飼育ゾウ森林伐採の禁止等で仕事がなくなり、観光客相手にと仕事内容も変わってきています。野生動物から人間の欲求目的に沿って長い年月をかけて改良に改良を重ねてきた家畜とは違い、全く改良せず馴致することだけで人間と生活を共にしてきたアジアゾウこそ今言われている「動物と人間の共存」と言えるかもしれません。このすばらしいアジア文化を認め、見習うことがアジアゾウを救うヒントになると考えます。
2.タイのゾウ
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ゾウに乗ってのトレッキング |
先に述べたようにアジアゾウは人間との関係で最も上手く行っている種の一つにあげられますが、最近ではその関係が危うくなり崩れかかっているためいろいろな努力がなされています。タイもインドに次いで使役ゾウが沢山いました。記録によると100年前には10万頭が飼育され、森林伐採等材木関係に従事していました。しかし主な天然資源であったチークが過度の伐採により仕事が年々減少し、ついに1989年に森林伐採が全面禁止になってしまいました。家族同然に生活していたゾウも年々その仕事量に合わせるように数が減り続けていました。
森林伐採業を営んでいた人たちは収入源を失い街に出て餌売りや写真をとらせるなど観光客相手に細々と生活していましたが、排泄物の面で衛生的に問題があることと交通の妨げになるという理由から、観光客が最も多く集まる都会の街中へゾウ進入が禁止になってしまうと言うダブルパンチに、大食漢であるゾウを抱える人たちは途方に暮れてしまいました。しかたなく罰金覚悟でこっそり街中につれて来るのですが、ゾウですのでこっそりとは行かず直ぐに保護され強制立ち退きをさせられてしまいます。
そこで誕生したのがエレファントキャンプです。ゾウによるショー、ライド、トレッキングなどが人気を博し、今では74カ所で約1,300頭以上が使役ゾウとして飼育されています。タイのゾウは野生が2,250頭、使役ゾウが2,200頭とほぼ同数になっていますが、タイは昨今経済的に急成長している国の一つで急速な開発に野生ゾウは生息域の減少と道路等の開通により群れの分断化など生存して行くには前途多難な道のりです。アジアでも唯一ゾウに関する法律を持っており、国立保護センターや老人(ゾウ)施設まで持っているタイのことですからこのままゾウたちを見捨てることはないでしょうが、タイのNGOも保護対策を見守るだけでなく十分協力する準備を進めています。エレファントキャンプという生きるすべを見つけただけでなく、大学や研究機関、NGO等と連絡を取り合い飼育方法の改善、繁殖研究などを進め毎年多くの子供が生まれています。あとは彼らが安定した環境で飼育されるような収入源の確保と減少し続ける野生ゾウの保全対策履行に期待するだけです。
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崖から転落し、大けがをした子ゾウの治療
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作業中に事故で鼻を切断された負傷ゾウを
国立ゾウ保護センターで治療を続けている
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3.国際的取り組み
あのスマトラ沖地震による津波災害の際も重機が動けない場所の家屋倒壊材を片づけるためエレファントキャンプからゾウが駆り出され大活躍したニュースはまだ記憶に新しく、いかに人間と共に生きているかということを目の当たりに見ました。
これほどの動物ですからこのゾウに関する研究並びに支援は国内だけでなく国際的にも多くの協力者や団体が名乗りを上げています。日本からも動物園の職員や動物に関する勉強をしている大学生などがチェンマイ大学との協力で平成15年から研修会を開催し、毎年多くの参加者が集まっています。また今年はマヒドン大学でゾウの繁殖生理に造詣が深いドイツの研究機関と協力して専門研修会を開き、日本を始め韓国、台湾、スリランカ、シンガポール、ドイツ、オーストリア、アメリカなど10カ国から参加者が集まりました。
欧米諸国の動物園は早くから本場インドやタイで勉強を重ねてきた結果多くの繁殖・育成に成功し、技術面でも人工授精など研究を進めています。日本の動物園でゾウの飼育は100年を超えますがアジアゾウに関しては未だに繁殖・育成に成功していません。アジアの先進国と自負しているにはあまりにもお粗末です。アジアの中でリーダーシップを取ってゆくには経済だけでなくアジア文化を認めることが大切です。ゾウと共に生きてゆくアジアの文化を見直し、それを取り入れることも大事です。
今年タイからケニア政府の要請でマフー(ゾウ使い)5人が派遣されます。もちろんタイと同じく野生での生存が危ぶまれているアフリカゾウを馴致し、生息地の保全に併せ種の保存のためにもこのアジア文化を取り入れていこうという試みです。ゾウを馴致したり、乗ったりすることは繁殖も出来ない駄目ゾウになると言われていましたが、現地では人を乗せないようなゾウは繁殖も出来ないと言い切っています。ゾウは人と共存することによって守られると言っても過言ではないでしょう。今一度ゾウについて考えてみることが必要かもしれません。
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胸囲を測定しての体重推定実習
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超音波を使った診断実習
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