動物フィギュア制作のココロ

海洋堂
松村 しのぶさん

 僕は、動物や恐竜などのフィギュアを造る仕事をしています。そう、最近コンビニなどで「お菓子のおまけ」として売られているアレです。
「おまけ」を造り始めて早4年経ちますが、ほ乳類から鳥、カメ、無脊椎動物まで今までいったい何種類の生き物を造ったのか、もう…。数える気も起こりません。モノが小さいので制作時間が短くて済むのが救いですが、量産や彩色など後々の事を考えながら造らなければイカンですし、同じシリーズ内でサイズを統一するのも実は意外に大変だったりします。
 僕が、これらの小さな動物たちを造型するにあたって気をつけていることは「単なる立体図鑑にはしない」ということです。もちろん造る動物の特徴を再現するのは当然ですが、正確さを気にするあまり、動きのない標本のようなモノになってはならないと思っています。やはり手にとった人が「生きた動物」を感じる、ことが大切なのです。僕はもともと生き物が大好きで、動物園や水族館によく行きますし野生動物を見に出かけたり、ペットショップも好きです。もちろんTV番組や本などから情報を得たりもしていますが、実際に造り始める前には以前からそうやってさまざまなかたちで体験してきた動物たちの姿が浮かび上がってきます。おおまかな体のバランスやポーズ付けながら自然に手が動いて造ってしまうといった風です(勘違いして覚えてしまってることもありますが…)。
 例えばイリオモテヤマネコは、イリオモテヤマネコだけが持つ特徴はほんのわずかで、多くの部分はいわゆる普通のネコと共通です。類似点も相違点も基本の「ネコ」を知らずして感じ取ることはできません。ネコならネコ、まずそれぞれのグループらしさを出したい、それには身近な動物、かれらが一番のモデルや教科書になってくれている、と僕は思っています。

(まつむら しのぶ)