ただ今、見習い中

飼育課:早川 篤

 4月は入学や入社など、新しい事が始まる季節です。動物園でも担当異動が定期的にあります。今年は私もオランウータンの担当になりました。当園では1ケ月の研修期間があります。その間に、新しい動物舎の仕事を覚えなくてはなりません。その間には、こんな失敗も…
 オランウ−タン舎で、何日も前任者に付いて仕事を教えてもらいます。そして、いよいよ一人で収容作業をする事になりました。オランウータンのように賢いと、信頼関係のない人の言う事など聴いてはくれません。扉を開けても、寝室に移動するのは本人の意思がない限り絶対に動いてはくれません。はたして、どうなるのか。不安と緊張のなかで、シャッターの扉を開けます。
 「んっ!」、シャッターはピクリとも動きません。オランウータンはとても力が強いですから、いたずらをしてシャッターを手で押さえているのかもしれません。初心者の飼育係がどうするか試しているのかも、それとも困らせてやろうとイジワルしてるのか…どう対処したものかといろんな事が頭を駆け巡ります。こういう時は一息ついて、ふーっ。
 ふと、目を向けた先に見えたのは…ナント、ストッパーではありませんか!
 自分が作業手順を間違えて、ストッパーを外すのを忘れていただけなのでありました。それなのに、オランウータンを疑ってしまい、申し訳ない事をしました。もう一度、最初からやり直し、その日は順調に一日の作業を終えました。
 今回はストッパーの外し忘れでしたが、これが鍵のかけ忘れだと取り返しの付かない事態になります。緊張と冷静さを忘れず、早く一人前に…なれるんでしょうかね?