飼育課 西村慶太

 2002年秋に同居を開始したイヌワシのソニアとハヤテ。ようやく夫婦らしくなってきて、繁殖への希望もでてきましたが、彼等を取り巻く環境には多くの障害があるのです。そんな中で一生懸命生きるイヌワシたちの生活をご覧下さい。


イヌワシたちがくらす猛禽舎。奥の崖が彼等の巣です。


 動物園北端に位置する猛禽舎は、常に渋滞の国道25号線や阪神高速道路に面しています。車のクラクションやバックファイヤーに驚くワシたちの姿がよく見られ、気の毒です。


 猛禽舎裏側。実はこの裏側にも観覧通路があるため、ワシたちは前後からお客様に見られる形になります。神経質なワシたちの繁殖を考える上で、これは大きな問題点です。

 そこで繁殖の可能性のあるシーズンのみ裏側の通路を通行止めにして巣作りに専念できる環境を作りました。本当はオールシーズンこうなれば理想的なのですが。

 奥の崖だけではなく、手前にも止まり木を設置することで、ワシたちも広い空間を上手に使うようになってきました。

 餌は冷凍のマウスやラットを中心に与えています。毛や骨のついた動物を丸ごと食べさせることが健康上大切なことなのです。

 繁殖期は入舎作業を最小限に止め、巣のある崖の方向を見ないようにして「僕ら巣には気づいてません」と視線にも気を配ります。
 オスのハヤテはマウスをわしづかみにして巣に持ち帰り、メスのソニアに与えます。
 猛禽類の繁殖には長い年数がかかります。多くの困難を乗り越え、数年先にこのイヌワシ夫婦にヒナが誕生することを祈っています。