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天王寺動物園 園長 中川 哲男 さて、天王寺動物園の羊 についてふれてみますが、
エピソード1 昭和58年のサクソン・エクストラ・ファイン・メリノーについてエピソードをご紹介しましょう。大阪市に本社のある繊維商社のF社がオーストラリア・タスマニアのローンセストン市で買い付ける原毛を毎年、最高価格で落札し有名となっていました。そこでローンセストン市ではその功績を称えるため国際親善を兼ね、世界最高級の羊毛を生産する「サクソン・エクストラ・ファイン・メリノー種」を大阪の動物園に贈ろうということになり、2頭が寄贈されました。華々しく贈呈のセレモニーが行われ「世界で最高級のウールを生産する羊だ」と胸をときめかし、最高級の羊を飼育展示できるということで自慢に思っていたのですが・・・残念ながらこの羊、繁殖能力がないということが分かりました。なぜなら最高級のウールを持つ羊が国外に出て盛んに繁殖したのでは将来、オーストラリアの羊毛貿易に大きな影響を与える結果になりかねないということです。去勢した羊を見て、子孫を作ることなく、あと15年ほどすると天寿を全うするのかと思うとやるせなくなりました。毎年6月1日の衣替えの日に行われる「羊の毛刈り」でもコリデールの雑種と一緒に刈り取られた最高級の羊毛はこれらの羊の毛と一緒にされ、最高級のスーツに変わることなく原毛問屋に引き取られていました。
最後に羊の名誉のため書き添えますが、家畜化の歴史は犬より遅れますが、牛や馬より古く8,000年から9,000年前に西アジアでアジアムフロンが馴化され、改良交配されて、今の家畜の羊の原型が出来上がったといわれています。
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