象の水浴び

飼育係 油家 謙二

 今年は暖冬のせいで、春先から暖かくなるのが早く、梅や桜も例年より早く咲き、桜は大阪では3月後半には満開、4月になると散ってしまうほどでした。と言っても私たち人間の場合は、例年に比べて、暖かいか寒いかは直接肌で感じるのと別に、例えばニュースで知ったり、温度計の数字を見て知ったりと外からの様々な情報を得て判断していると思います。
 一方自然界では、動物にしても植物にしても、そういった外部からの情報等一切必要とせず、自分の内部で感じた通りに反応しますから、暖かい年は早く桜も咲き、蝶も早く見かけます。これらは、誰から教えられるのでもなく、自分が暖かいと感じたからそうなるのだと思います。
 当園の象は、冬の期間寒さ対策の為、夜間は象の寝室のシャッターを閉めていますが、冬が終わり、象舎の最低気温が10度を下回らなくなった時点で閉めるのをやめます。今年は、ちょうど4月1日から夜間も開けるようにしましたが、3月下旬より昼間の最高気温は20度位まで上昇しており、暖かいというより暑いくらいの日が続いていました。
 こんな中、シャッターを開けだした翌日の4月2日、午後1時半頃、象の「博子」がいきなり今年初めての水浴びを始めました。初めは遠慮気味にプールの水を鼻で吸って、体に掛ける程度でしたが、そのうち直接プールに入り本格的に水浴びを始めてしまいました。寒いものは寒い。暑いものは暑い。動物はなんて正直なのだと思いました。これから10月頃まで、頻繁に水浴びをしている象の姿が見られるでしょう。